インターナショナルスクールの統計・調査を行っているISC Research(本部:英国)によると、2023年7月現在、世界のインターナショナルスクールは、2013年の8,709校から2023年に13,614校に増加しているそうです。
この記事では、日本だけではなく世界中で支持されるインターナショナルスクールのカリキュラムについて解説いたします。
国際バカロレア (IB)
国際バカロレア(通称:IB)はスイス・ジュネーブで設立された非営利組織「国際バカロレア機構」によって提供される教育プログラムです。
IBカリキュラムは日本のインターナショナルスクールでも特に支持されている教育カリキュラムのひとつですが、世界的にも「国際社会で通用する人間を育てる教育プログラム」として定評があり、国際バカロレア認定校は年々増加しています。
IBカリキュラムは、PYP(初等部)・MYP(中等部)・DP(高等部)・CP(キャリア関連プログラム)と生徒の発達段階に応じてそれぞれに用意されています。
IB PYP
国際バカロレアのPYP(プライマリー・イヤーズ・プログラム)は3~12歳を対象としています。精神と身体の両方の発達を重視したプログラムでどの言語でも受講可能です。
カリキュラムは人間の共通性に基づいた以下の6つのテーマを中心に構成されています。
- Who we are.(私たちは誰か)
- Where we are in place and time.(私たちはどのような時代と場所にいるか)
- How we express ourselves.(私たちはどのように自分を表現するか)
- How the world works.(世界はどのような仕組みになっているのか)
- How we organize ourselves. (私たちは自分たちをどう組織しているのか)
- Sharing the planet.(この地球を共有するということ)
上記のテーマに取り組みながら以下の6教科について学習します。
- 言語
- 社会
- 算数
- 芸術
- 理科
- 体育(身体・人格・社会性の発達)
IB MYP
MYP(ミドル・イヤーズ・プログラム)は11~16歳が対象です。MYPはPYPでの学習内容と社会の繋がりを学ばせるプログラムで、日本語での受講が可能です。
MYPは以下の8教科を5年間にわたって学習します。
- 言語と文学
- 言語の習得
- 個人と社会
- 理科
- 数学
- 芸術
- 保健体育
- デザイン
上記の8教科に、「相互作用のエリア」(AOI:areas of interaction)と呼ばれる以下の5分野が紐づけられ、教科と実社会との関連を考えながら「人間の共通性」が探求できるようにデザインされています。
- 学習の方法(ATL: Approaches to Learning)
- コミュニティーと奉仕活動(Community and Service)
- 人間の創造性(Health and Social Education)
- 多様な環境(Environments)
- 保健教育と社会性の教育(Human Ingenuity)
IB DP
DP(ディプロマ・プログラム)は16~19歳が対象で、所定のカリキュラムを2年間履修し、最終試験に合格することで「国際バカロレア資格」が取得できるプログラムです。
この資格は、国際的に認められた大学入学資格であり、南半球と北半球の学校に対応できるよう世界で年2回一斉に実施されます。
DPカリキュラムは6つのグループ(教科)及び3つの必修要件(コア)から構成されています。
グループ1 | グループ2 | グループ3 |
---|---|---|
言語と文学(母国語)
|
言語習得(外国語)
|
個人と社会
|
科目名:
「言語A:文学」 「言語A:言語と文学」 「文学と演劇」SLのみ(※) |
科目名:
「言語B」 「初級言語」SLのみ |
科目名:
地理、歴史、経済、ビジネスと経営、情報テクノロジーとグローバル社会、哲学、心理学、社会・文化人類学、世界の宗教(SLのみ)、グローバル政治 |
グループ4
|
グループ5
|
グループ6
|
理科
|
数学
|
芸術
|
科目名:
生物、化学、物理、コンピュータ科学、デザインテクノロジー、スポーツ・エクササイズ・健康科学、環境システムと社会(※)
|
科目名:
「数学:解析とアプローチ」
「数学:応用と解釈」
|
科目名:
音楽、美術、ダンス、フィルム、演劇
|
コア科目
|
||
知の理論
Theory of Knowledge (TOK) |
課題論文
Extended Essay (EE) |
創造性・活動・奉仕
Creativity, Activity & Service (CAS) |
(※) 「文学と演劇」はグループ1と6の横断科目
「環境システムと社会」はグループ3と4の横断科目
(参照:DP(ディプロマ・プログラム) | 文部科学省IB教育推進コンソーシアム )
6つの教科は、基本的に各6つの科目グループから1つずつ選択します。カリキュラム表の赤字は、日本語でも受講可能としている科目です。それ以外の授業は、英語かフランス語かスペイン語での受講となります。
なお、日本語DPであっても、6科目中2科目は、英語等での履修が必須です。2科目とは、「グループ2(外国語)+ 他1科目」であることが一般的です。
各科目には標準レベル(Standerd Level=SL)と上級レベル(Higher Level=HL)があり、3~4科目は上級レベルで学習する必要があります。
3つのコア科目とは、TOK(知の理論)、EE(課題論文)、CAS(創造性・活動・奉仕)のことで、IBDPの核となるものです。学んだことに対する問い、個人で考えた研究テーマについての論文作成、芸術活動やボランティア活動などの実践的な体験が行われます。
IB CP
国際バカロレア・キャリア関連プログラム(IBCP: Career-related Program)は16~19歳を対象としたプログラムで、生涯のキャリア形成に役立つスキルの習得を目指して構成されています。生徒が自身のキャリアに関係するプログラムを選択受講する形式です。
今のところ日本ではまだ行われていないプログラムなので、情報も少なく、今後の普及が待たれます。
ケンブリッジ式カリキュラム (Cambridge International)
ケンブリッジ式のカリキュラムは、英国のケンブリッジ大学国際教育機構(CAIE:Cambridge Assessment International Education)が提供している国際教育プログラムです。
日本で採用されている学校は数少ないですが、国際バカロレアと並んで世界で普及しています。
Cambridge International AS & A Levelの資格試験をクリアすれば、海外でも認められる大学進学資格が得られます。
ケンブリッジ式カリキュラムの対象年齢は満5〜19歳で、日本の小学校は通常満6歳からのため、1歳早く入学することになります。
年齢順にカリキュラムの内容を見ていきましょう。
Cambridge Primary(ケンブリッジ・プライマリー)
Cambridge Primary(ケンブリッジ・プライマリー)は5~11歳を対象にしています。各学校のニーズに合わせて簡単に調整できる柔軟なプログラムです。以下10科目から選択します。
- 英語 (第一言語または第二言語としての英語)
- 数学
- 理科
- 音楽
- 体育
- アートとデザイン
- コンピュータ―
- デジタルリテラシー
- グローバル・パースペクティブ
Cambridge Lower Secondary(ケンブリッジ・ローワー・セカンダリー)
11~14歳対象で、ケンブリッジ・プライマリーの内容と連続した形で各教科を学習します。
以下10科目から選択します。
- 英語(第一言語として)
- 英語(第二言語として)
- 数学
- 理科
- 音楽
- 体育
- アートとデザイン
- デジタルリテラシー
- グローバル・パースペクティブ
中等教育の最後に、英語、数学、理科、グローバル・パースペクティブの科目は、ケンブリッジ国際による試験が行われます。外部からのフィードバックにより、さらに自信に繋がります。
Cambridge IGCSE
Cambridge International AS & A Levelは、16~19歳が対象のカリキュラムです。資格試験に合格すると、高校の卒業資格として認められ、大学の入学条件を満たすことができます。日本の文部科学省ではASレベルのみの修了は大学入学資格にならないとしているため、注意しましょう。
履修期間はCambridge International AS Levelが1年、Cambridge International A Levelが2年です。ASレベルの試験を受けてから、Aレベルの試験を受けるという流れが一般的です。
必須科目はなく、一般的には3~4科目を選択履修します。カリキュラムは55科目(Cambridge International AS & A Level subjects)から柔軟に組むことができます。
Program | Age | Detail |
---|---|---|
ケンブリッジ
プライマリー
|
5歳~11歳
|
ケンブリッジのプライマリーカリキュラムは、各学校のニーズに合わせて簡単に調整できる柔軟なプログラムです。以下10科目から選択します。
<主要科目> - 英語 (第一言語または第二言語として) - 数学- 数、尺度、幾何学、データ処理、問題解決 - 理科- 生物学、物理学、化学、科学的探究 上記の主要科目に加えて以下の科目を追加で受けることもできます。 - 音楽 - アートとデザイン - コンピュータ― - デジタル文芸(IT) - グローバル・パースペクティブ - 体育 |
Cambridge Lower Secondary
(中等教育)
|
11歳~14歳
|
3年制のプログラムです。
ケンブリッジ・プライマリーの内容と連続した形で各教科を学習します。 中等教育最後に、英語、数学、理科、グローバル・パースペクティブの科目は、ケンブリッジ国際による試験が行われます。外部からのフィードバックにより、さらに自信に繋がります。。 |
Cambridge IGCSE
|
14歳~16歳
|
IGCSE(International General Certificate of Secondary Educationの略称)はイギリスの義務教育修了資格であり、中等教育の分野において世界で最もよく知られたカリキュラムです。生徒はこの学年の過程で9~12科目を学びます。
なお、IGCSE資格は日本の中学3年生から高校1年生に相当しますが、該当の年齢でなくても取得する事ができるため、飛び級などの制度を活用したい場合に役立ちます。 |
Cambridge International AS & A Level
|
16歳~19歳
|
一般に「A Level (Aレベル)」と呼ばれるディプロマを取得することにより、世界中の大学へ進学が可能です。
Cambridge International A Level のプログラムは、修了に2年間が必要とされます。 必須科目はなく、一般的には3-4科目を選択履修します。(大学進学に必要な科目数は3)。 |
CBSEカリキュラム
CBSE(Central Board of Secondary Education)カリキュラムはインド政府が定める教育法のことで、インド以外の20か国以上にも提供されています。
IBやケンブリッジほどの認知度はありませんが、IT業界に強いインドの特性を生かした新しい発想と人生の課題に対しての積極的な姿勢を学べるカリキュラムです。
1~12年生まであり、中等教育修了時(10年生)と高等教育修了時(12年生)に、CBSE機関の公開試験を受けるのが一般的です。この試験に合格することで、インドの高校や大学の入学資格が得られます。
筆記試験は「多肢選択問題」「記述問題」「長文記述問題」があり、学校によっては他の試験もプラスで行われます。
アメリカ式カリキュラム (コモンコア)
コモンコア(The Common Core State Standards)は「各州共通基礎スタンダード」という意味で、アメリカの州を越えた統一的な学力基準のことです。幼稚園から高校までが対象で、日本での学習指導要領のように、学年に応じて「何を知り理解しなくてはいけないか」が定められています。教科は「数学」と「英語教育」が軸になっているのが特徴です。
2014年9月から本格的に導入され、アメリカ国内の多くの公立と私立の小学校・中学校・高校でこの基準が採用されています。
アメリカの大学に進学を希望する場合は、多くの場合でSATⓇ(大学進学や就職で求められる知識やスキルを問う統一試験)のスコアを取得することが求められます。
SATⓇの科目は読解と数学のため、コモンコアのカリキュラムと合っています。将来アメリカを進路先として考えている場合は、この全州共通カリキュラムのあるスクールを選択するのがよいでしょう。
プリスクールにおすすめなカリキュラムは?
日本における「プリスクール」は小学校進学前までの0~5歳を対象とした保育・教育施設のことです。
最も大きな特徴は、施設内でのやりとりはすべて英語を使って行われているという点でしょう。
各プリスクールにおいて、幼児期の成長をサポートするためのさまざまなカリキュラムが提供されています。
モンテッソーリ教育
モンテッソーリ教育の特徴は、子どもには「自己教育力」が備わっていると考えることです。
例えば、赤ん坊は誰かに強制されなくても、時期が来れば寝返りをし、立ち上がり、聞こえた言葉を反復し始めます。
モンテッソーリ教育においては、大人が子どもに一方的に何かを教えることはありません。子どもの主体性を尊重し、大人は子どもの自己教育力を信じて、あくまでも力を発揮しやすい環境を整えることで成長の手助けをするだけです。
前期 | 後期 | |
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対象年齢
|
0~3歳
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3~6歳
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子どもの状態
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周囲の様々なことを学ぶ時期
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学んだことを生活に活かす時期
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大人がすること
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手先や体全体を使った運動ができるよう、安全面に配慮する
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掃除や物を運ぶなど生活に関することができるようサポートをする
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イエナプラン教育
イエナプラン教育は、ドイツで生まれた教育法でオランダでも普及が進みました。
カリキュラムは教科別ではなく「4つのコア(会話・遊び・仕事・催し)」を循環させながら進められます。
この教育の特徴は、異年齢のクラス編成やインクルーシブ教育(障がい者と健常者のクラス分けをしない)などです。「学校と社会」の間にある隔たりをなくし、生徒一人ひとりが自主性と社会性を身に付けることを推奨しています。
STEAM教育
STEAM教育は「科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、リベラルアーツ(Arts)、数学(Mathematics)」の5つの頭文字を組み合わせた造語で、分野横断型の学びが主軸になっています。
AI技術などテクノロジーに強い子どもたちを育てるための教育法として、アメリカのオバマ元大統領が言及し脚光を浴びました。
日本でもSTEAM教育の重要性は認知されており、文部科学省は「STEAM教育等の各教科等横断型の学習」を推進しています。プリスクールでは、工作や自然遊びを通して子どもの「なぜ?」を引き出し、好奇心や考える力を養います。プログラミングが学べるプリスクールもあります。
まとめ
「インターナショナルスクール」と一言で言っても、スクールによってカリキュラムは様々です。
英語力に加え、自主性を身に付けてほしい、思いやりを持ってほしいなど、どんなことを吸収してほしいか考えながらスクール選びをしましょう。カリキュラムによっては大学の受験資格に関わるものもあるため、進路も見据える必要があります。
将来のスクール選びの参考になれば幸いです。
インターナショナルスクール内では、基本的には英語が公用語とされています。
従って、子どもの英語力が伸び悩んでしまうと、授業が理解できず、学力自体の低下が懸念されます。試験などで合格点とならなかった場合は、進級できないこともあるようです。
このほか、教師や学校方針と合わない、仕事で転勤になったなど不測の事態が起こったときに、一般校のようにそれまでと同じようなカリキュラムの学校が近くにあるとは限りません。地方に行くほど、スクールの数は減少します。選択肢の少なさもデメリットのひとつとなるでしょう。