「成長マインドセット(Growth Mindset)」という言葉をご存知でしょうか?成長マインドセットは近年、ビジネスの世界でも注目されているや考え方で、「グロースマインドセット」とも呼ばれています。ビジネスのみならず、教育やスポーツの世界でも取り入れられており、成長マインドセットを育むことで人は大きく飛躍できると考えられています。
本記事では、成長マインドセットと固定マインドセットの違いや、成長マインドセットを身に付けることのメリット、育成方法や注意点などを詳しく解説していきます。
成長マインドセット(Growth Mindset)とは何か?
成長マインドセット(Growth Mindset)とは、自分の能力は努力や学習を通じて成長・向上するという信念や考え方を指します。この概念は、スタンフォード大学の心理学教授であるキャロル・ドゥエック(Carol Dweck)博士によって提唱され、「しなやかマインドセット」とも呼ばれています。
成長マインドセットを持つ人々は、失敗や困難を避けるべきものではなく、学びの機会と捉えています。自分のスキルや知識は限定されておらず、挑戦を通じてさらに向上させられるとも信じています。そのため、困難な課題にも積極的に取り組み、他者からのフィードバックを受け入れて、努力を続けることができるのです。
成長マインドセットは生まれ持った能力ではありません。努力次第で身につけていくことのできる、高いヒューマンスキルなのです。
成長マインドセットを持つ人の特徴
成長マインドセットを持つ人には、次の4つの特徴があります。
1.チャレンジ精神がある
成長するマインドセットを持つ人は、積極的に困難な課題に取り組み、新しいことに挑戦します。
2.努力を惜しまない
成長マインドセットの人は、才能でなく努力が成功の鍵だと理解しています。
3. 批判から学ぶ
他者からフィードバックや批判を受けた、成長のための貴重な機会と受け止めます。
4.他人の成功をインスピレーションにする
成長マインドセットを持つ人は、他人の成功を脅威と感じるのではなく、インスピレーションの源として捉えます。
固定マインドセット (Fixed Mindset)との違い
成長マインドセットと相対する考え方が、固定マインドセット(Fixed Mindset)と呼ばれるものです。固定マインドセットは、「硬直マインドセット」とも呼ばれ、自分の能力は生まれつき決まっていて変えることができないという考え方を指します。
固定マインドセットを持つ人々は、失敗を自分の能力の限界と捉え、挑戦を避ける傾向があります。そのため、早い段階で成長が止まり、潜在的に眠っている才能や可能性が開花しないというデメリットがあります。
成長マインドセットが注目されている背景
マイクロソフト社の会長兼CEOのサティア・ナデラ氏は、同社の文化改革のきっかけとなったのは、本記事の冒頭でも触れたキャロル・ドゥエック博士の著書『マインドセット「やればできる!」の研究(原題:Mindset: The New Psychology of Success)』だったと述べています。
2014年に第3代CEOとして就任したナデラ氏は、シェアが停滞する同社に成長マインドセットを導入。同社がクラウドコンピューティングの分野でパイオニアとなるため、失敗をより大きな学習の一部と考える成長マインドセットを企業文化として取り入れました。
これにより、同社の四半期決算でクラウド事業は114億ドルと大きな売上高を記録。ナデラ氏のリーダーシップがマイクロソフト社にもたらした変革により、成長マインドセットは大きな注目を集めるようになりました。
成長マインドセットの重要性
マッキンゼー・アンド・カンパニーの報告書によると、AI(人工知能)や業務の自動化の急速な発展により、2030年までに世界で最大3億7,500万人が職業を変え、新たなスキルを習得する必要に迫られる可能性があるとされています。
予測では、新たなスキルを習得し、転職を強いられる労働人口の割合が先進国のアメリカとドイツでは2030年の労働人口の最大3分の1、日本では約半数に上ります。
仕事の役割と意味が変化するため、企業でも将来必要となる能力を従業員が習得するために再教育を行うことや、人員を再配置する習などの見直しが重要です。
また個人レベルでも、需要のあるスキルを身につけ、未来の仕事に備える必要があります。このような変化の激しい世界情勢下でも悲観的にならず、成長マインドセットを持ち、変化を新たな成長のための機会だと前向きに捉えることが、今後の世界を力強く生き抜く上で欠かせないスキルといえるでしょう。
成長マインドセットを身につけることのメリット
教育現場はもちろん、ビジネスやスポーツにおいても成長マインドセットを持つことは大きなメリットをもたらします。
1.人間関係に役立つ
「すべての悩みは対人関係の悩みである」という言葉がありますが、成長マインドセットを持つことは学校生活ではもちろん、大人になってからの人間関係でも役に立ちます。
例えば、自分に対して心無いことを言う友達がいたり、仲間はずれにされたりしても、「人間には変われる力がある。悪いことをした人も何か理由があるのかもしれない。自分に大きな欠点があるのではない」と強く、前向きな心を持つことができます。そして、大人になって自分と違う意見の人がいても、その考えを吸収しながら成長の糧にしていけるのです。
2.挑戦を楽しめる
成長マインドセットを持つ人は、失敗を成長や学びの機会と捉えます。失敗した、ということは挑戦したということです。困難に果敢に挑戦し、たとえ成功しなかったとしても、うまくいくように工夫したり、失敗から学んだりと、挑戦の過程を楽しめるようになります。
特に日本では、失敗を「恥」と捉える傾向があり、間違いや失敗を不要に恐れがちです。子どものうちから「失敗の先に成功がある」「まだ、できないだけ」というマインドを持つことで、挑戦が楽しくなり、自己成長につながることが期待できるでしょう。
3. 自信を持てる
成長マインドセットを持つと、大きな成功体験を得られなくても、小さな自己成長を楽しむことができるようになります。
これにより、「以前よりも成長した」と成長の過程も含めて自己肯定感を高めることができ、少しずつ自信をつけていけるようになります。
成長マインドセットを育むための方法
成長マインドセットを養うには、意図的な努力が欠かせません。マインドセット自体は生まれ持った才能ではなく、固定マインドセットの人でも成長マインドセットに変えていくことはできます。次の三つの方法を意識しながら、継続的に取り組んでいくようにしましょう。
1.ビッグゴールとスモールゴールを決める
成功体験を積み重ね、自信につなげていくことで、成長マインドセットを育成できます。それには、ビッグゴール(高い目標)だけでなく、その過程にスモールゴール(中間目標地点)も設定するのが有効です。
スモールゴールを一つずつ超えながら自分を承認する体験を重ねることで、前向きなモチベーションを失わずに最終目標に向かって進めます。
2.挑戦を恐れない
成長マインドセットを持っていると挑戦を楽しめるようになります。
いきなり大きな挑戦をする必要はありません。小さな挑戦から始めてみましょう。小さな挑戦から成果を得ていくことで、挑戦に対する抵抗感や不安が減り、挑戦することで成長の機会を得られます。
3.結果ではなく、過程を大事にする
先にも述べたように、日本社会では失敗を不要に恐れる風潮があります。成長マインドセットを身に付けるには、成功・失敗という結果だけを重視するのではなく、その過程を評価することが大切です。
知識やスキルは失敗を繰り返す中で身に付きます。良い結果は良い過程があってこそ得られるものだと、考え方を変えることも重要です。
成長マインドセットにおける注意点
せっかく成長マインドセットを育成するなら、効果的に取り組んでいきたいですね。ここでは、成長マインドセットに取り組む際の注意点についてご説明します。
1.中間目標なしに高い目標のみを掲げる
高い目標を掲げることは決して悪いことではありません。しかし、いきなり高い目標を立てると、達成できずに自信をなくすこともありえます。
前章でもお伝えしたように、高い目標だけでなく、スモールゴール(中間目標地点)も同時に設定し、小さな成功体験を積み重ねながら高い目標に向かっていきましょう。
2.失敗から学ばない
失敗することで落ち込まない人はいないでしょう。しかし、失敗は終わりではありません。
株式会社ファーストリテイリングの柳井代表取締役会長兼社長は、著著『一勝九敗』で、「十回の挑戦のうち九回失敗して、成功した一回が現在のUNIQLOを作っている」と述べています。
挑戦や失敗を意味のあるものに変換するには、自己反省から教訓を得ていくことが重要です。失敗した原因を突き止め、常にトライアンドエラーを繰り返し、走りながら修正していきましょう。「失敗から学ぶ」ことを忠実に繰り返していくことで、その経験を今後に活かせます。
まとめ
成長マインドセットは生まれつきのものでなく、後発的に向上させることが可能です。ワンワールドインターナショナルスクール(OWIS)のカリキュラムである探求型学習は、学習に対する生徒の主体的な姿勢や試みを奨励し、本質的な成長マインドセットを育みます。
OWISでは、リスクを冒して新たなことに挑戦するという姿勢を大いに奨励しています。完璧を目指すよりも失敗から学び、そこから少しずつ改善を重ねることで、結果的に学習や成長スピードが速まります。これは、従来の日本の教育と大きく異なる点といえるでしょう。さらに、OWISでは成長マインドセットの内容を含む教師向けの定期的な研修を開催しており、それが教育現場での実践に活かされています。
OWISでは、カリキュラムを通して生徒自身が目標に向かって挑戦するサポートをしています。カリキュラムの詳細にご興味がある方は、下記のボタンからご覧ください。